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Journal of Business Research誌論文感想

Jeffrey W. Overbya, Eun-Ju Lee: The effects of utilitarian and hedonic online shopping value on consumer preference and intentions, Journal of Business Research, Volume 59, Issues 10-11, pp. 1160-1166, 2006.
オンラインショッピングサイトにおいて,価値(value)と選好(preference),意図(intention)との関係を調べた論文である.同じことはオフラインのショップでは調査されており,本論文はそれのオンライン版である.価値とは,顧客が店(や商品)に対して持っている絶対的価値のこと.「価格は妥当なものであったか」とか「このオンラインショッピングサイトでの購入により時間が節約できたか」とかそのような比較的明示的質問によって得られる指標としている.漠然としているが,経済学の分野ではそれなりに市民権を得ている概念のようである.
価値には実用的価値と快楽的価値(買い物そのものが楽しい)があることが分かっており,この論文では,以下のような仮説を検証している.
1.価値判断はサイトに対する選好および将来の意思決定と正の関係がある.
2.サイトに対する選好は,将来の意思決定に対して正の影響を及ぼす
3.消費者の実用的価値に対する価値判断は,快楽的価値よりも強く選好と関係している
4.オンラインでの買い物頻度の多い消費者は頻度の少ない消費者よりも実用的価値が選好に与える影響の大きい(オンラインでの買い物頻度の多い消費者は頻度の少ない消費者よりも快楽的価値が選好に与える影響の小さい)
価値は,上記のような,価値に関係しそうな質問項目を著者らが考えて複数設定している.回答は7段階である.選好や意図に関係する質問も,著者らが考えて複数設定している.
通常,このように複数の属性に対する値が得られれば,それらの共起関係から因子分析により,隠れた因子を探し,それが何かを(人間が)推定するのであるが,これはあらかじめ関係する質問項目を用意しておき,隠れた因子を実用的価値であれば実用的価値と決めている.このような隠れた因子を想定している中で,質問項目がどれほどその隠れた因子と関係があるのかを統計的に導き出している.ベースとしては質問項目間の相関係数より算出している.
実用的価値,快楽的価値,選好,意図間の関係は,それぞれの質問項目間の相関から算出している.
実験結果としては,実用的価値→選好は快楽的価値→選好よりも相関が高いことを示している.また,選好→意図の相関も高いことを示している.これにより,仮説1,2,3を実証している.また,ショッピングの頻度順にわけると,実用的価値→選好は,頻度の高い被験者の方が高く,快楽的価値→選好は,頻度の低い被験者の方が低くなっている.これにより仮説4が検証されている.
あらかじめ想定している隠れた因子が,各質問項目と統計的に関係があることを立証する方法は,工学系の研究者も見ておくべきであろう.しかし,非常にあいまいな概念である「実用的価値」や「快楽的価値」を事前に想定される隠れ因子としておくのは,科学的にはやや正しい方法とは言えない.また,質問も著者がが考えたものであり,ここも科学的根拠を立証するのは難しい.
現代科学は,証明することが難しいことを解明することに突き進みつつあるが,その方法論も模索中であることを感じさせる論文である.

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