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2015年3月

ACM CSCW2015 参加報告 その8

3日目.一般セッション午後の部の報告です.
 
<Experiencing Social Media>のセッション
I LOVE THIS SITE! vs. “It’s a little girly”: Perceptions of and Initial User Experience with Pinterest
Hannah J. Miller, University of Minnesota, USA
 
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これもGroupLens Research の論文である.
Pinterestを使うときには,Facebookなどの他のソーシャルメディアの友人を導入すること(ブートストラッピング)ができるが,そのことが男性と女性でどのようにサービスへの満足度(評価)につながっているのかを調べている.
 
女性は,ブートストラッピングとされると非常に喜ぶが,男性は変わらないという結果を発見しており,その定性的な分析をしている.ブートストラップという観点が面白く,また定性的な分析結果についても非常に興味深い内容であった.
 
 
The Diffusion of Support in an Online Social Movement: Evidence from the Adoption of Equal-Sign Profile Pictures
Bogdan State, Facebook Inc., USA
 
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『Facebookのプロフィール画像で270万人が同性婚支持を表明』のイベントを対象にした実験結果の発表である.
 
米連邦最高裁で2014年3月26日に,同性婚の是非を問う裁判の審理が始まった.これに合わせ,同性婚を支持するFacebookおよびTwitterのユーザーが,自分のプロフィール画像を赤地にピンクの当符号に変更し,ニュースフィード上でバーチャルデモ行進に参加したというもので,これの拡散について分析している.なお,このプロフィール変更運動は、同性愛者の権利拡大を求める非営利の米人権活動団体Human Rights Campaign(HRC)の呼び掛けによってスタートし,画像のデザインには「すべての愛は平等」という意味が込められているという.
 
分析の結果,この運動に参加したのは,結婚適齢期の25-34歳のユーザが多かったこと,男性よりも女性が多かったことなどを報告している.
 
 
以上にて,ACM CSCW2015の参加報告を終わります.
最後までお付き合いいただき,ありがとうございました.
 
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次はサンフランシスコでお会いしましょう!

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ACM CSCW2015 参加報告 その7

3日目.一般セッション午前の部の報告です.
 
ACM CSCW2015ホームページ
<Recommender Systems>のセッション
Studying and Modeling the Connection between People’s Preferences and Content Sharing
Amit Sharma, Cornell University, USA
 
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近年,ソーシャルメディア上での「シェア」という行為を通して,自分の近隣の友人に向けてアイテムを知らせることが多くなっている.これは一種の社会的推薦(フィルタリング)とみることができる.この行為には,indivisuation(自分の好きなアイテムの表明とそれへの共感を求める)という衝動から行われる場合と,altuism(友人が好みそうなアイテムを提示して友人を助ける)という社会的貢献へのモチベーションから行われる場合が含まれる.
 
この研究では,senderのrating値とrecipientのrating値をシェアされたアイテムに対して比較し,indivisuation(自分の好きなアイテムの表明とそれへの共感を求める)とaltuism(友人が好みそうなアイテムを提示して友人を助ける)の間の関連を調べている.
 
 
Using Groups of Items to Bootstrap New Users in Recommender Systems
Shuo Chang, University of Minnesota, USA
 
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GroupLens Researchの論文である.MovieLensにおいては,ユーザの初期登録において,最低15個の映画についてratingを行わなければならなかった.しかし,このプロセスを完遂できないユーザが多く存在し,典型的なcold-start問題となっていた.
 
そこでこの研究では,個々のアイテムを評価させるのではなく,アイテムのグループを作り,そのアイテムに対して評価付けをさせる形で,初期登録を行わせることにした.グループへの評価付けを容易にするため,グループ中のアイテムに付与されたタグなどの情報から,グループへの記述も獲得し提示している.

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ACM CSCW2015 参加報告 その6

2日目.一般セッション午後の部の報告です.
 
ACM CSCW2015ホームページ
 
<Communities for Individual Behavior Change>のセッション
Snack Buddy: Supporting Healthy Snacking in Low Socioeconomic Status Families
Christopher L. Schaefbauer, University of Colorado Boulder, USA
 
貧しい家庭を対象に,ゲーム形式の健康食(健康的な食べ方)を学ぶアプリケーションを長期間(1か月)使ってもらい,家庭の食に対する傾向が変わるかどうかを調べている.
 
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インタビューを行っており,ゲーム試用期間とその後に,食に対する行動を変えるような言動を取ったかどうかを調べている.スナックを食べるのをやめるように子供に言ったとかを,定性的に分析する研究である.
 
定性的な分析結果から,食を学ぶアプリケーションの設計指針をまとめている.例えば,
・家族間の競争も必要
・デモグラフィック層に絞ったインタフェース
・家族の行動が見えるインタフェース
などである.
 
きちんと問題となるデモグラフィック層を対象に実験をしているのが素晴らしい.実社会に存在する問題を抱える社会階層にアプローチするというのは,日本のコンピュータサイエンスの研究者には見られない.
 
 
I Would Like to..., I Shouldn’t..., I Wish I...: Exploring behavior-change goals for social networking sites
 Manya Sleeper, Carnegie Mellon University, USA
 
SNSで変えたい自分の行動について尋ねている.数十個の(変化の)ゴールについてリッカート尺度で聞いている.
 
以下がゴールの例と,回答の割合.
Use less 31%
Post more 23%
Use more 15%
Post better 17%
User better 13%
 
変えたい理由は,Contact,Time,Attention,Safety/security/privacy,Self presentation,
less botheringなど.
これらの回答人数をFacebook , Instagram, Twitterで比較している
 
行動変化という視点が面白く,複数のソーシャルメディアを対象に実験しているのが良い.

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ACM CSCW2015 参加報告 その5

2日目.一般セッション午前の部(後半)の報告です.
 
ACM CSCW2015ホームページ
 
<Leveraging Language>のセッション
 
They Said What? Exploring the Relationship Between Language Use and Member Satisfaction in Communities
 Tara Matthews, IBM Research - Almaden, USA and Google, USA
 
IBM社内の142個のオンラインコミュニティを対象に使われているテキストの特徴と,メンバーの満足度に関する調査を行った.満足度は5段階で聞いている.
 
面白い結果としては,満足しているメンバーは
・第一人称単数形よりも第一人称複数形を多く使っている
・怒りに関する語よりも,心配に関する語を使っている.これにより他の人のサポートを受けている.
・冠詞は使わない
という結果が得られている.
 
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特に冠詞は使わないというところに興味を惹かれた.オンラインコミュニティでは,あまりきっちりした言葉づかいをしない方が満足度が上がるのだろう.これは,優秀な研究者ほど,積極的にソーシャルメディアをフランクに使っているのに通じるものがあると感じた.
 
 
Turkers, Scholars, “Arafat” and “Peace”: Cultural Communities and Algorithmic Gold Standards
 Shilad W. Sen, Macalester College, USA
 
概念のsemantic relatednessの正解データを得るのに,評価者にその意味的な近さを答えてもらうことが多い.しかし,これはコミュニティによって異なるかもしれない.それを確認した研究である.
 
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リンクのみ使ってSRを計算する方法と,テキストのみ使ってSRを計算する方法,そのハイブリッドで計算する方法を,各文化コミュニティ(cultural community)からのアンケート結果をそれぞれ正解値として考えたときに,どの方法がうまくいくかを比較した.
 
そうすると,心理学者のコミュニティにおいて自動で計算したSRと正解のSRの相関係数が最も低くなった.また,その場合,リンクを使うものがいちばんよく,テキストやそのハイブリッドは低い結果となった.
 
Semantic relatednessの研究分野に正解データの作り方に対する疑問を投げかける論文であり,極めて価値の高い論文だと思う.
 
 
Dissecting a Social Botnet: Growth, Content and Influence in Twitter
 Norah Abokhodair, University of Washington, USA
 
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Q1. Social Botnetによるネットワークがどのように大きくなるのか?
Q2. Social Botnetによるツイートの内容は通常のユーザのツイートとどう異なるのか?
Q3. Social BotnetがTwitterの議論にどのような影響を与えるのか?
を調べた研究.
 
ボットの発言するコンテンツの内容も調べており,News,opinion,スパムなどに分類している. ボットはopinionが少ないことが発見されている.
 
ボット作成者の狙いや,自動でのツイートの作成への難しさが背景にあると思われ,興味深い結果だと言える.
 

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ACM CSCW2015 参加報告 その4

2日目.一般セッション午前の部(前半)の報告です.
 
ACM CSCW2015ホームページ
 
<Young Adults and Online Behavior>のセッション
1. Manifestation of Depression and Loneliness on Social Networks: A Case Study of Young Adults on Facebook
 Sungkyu Park, KAIST, Republic of Korea
 
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ユーザの鬱に関する研究.Facebookの行動から予測しようとしている.
うつのユーザはより多くの投稿をしているが,いいねを受ける数が少なく,コメントをする数も,コメントを受ける数も少ないと報告している.うつのユーザは日中によりアクティブであるとのことである.
 
 
2. Coming of Age (Digitally): An Ecological View of Social Media Use among College Students
 Yiran Wang, University of California, USA
 
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ソーシャルメディア上の行動を広く調べている.特に,SMによりほかにしないといけないこと(学校の宿題とか)を妨害されているか?を調べている
 
SMを常にチェックしている人とそうでない人で,違いがあるかどうかを調べており,SMを常にチェックしている人は,やらないといけない仕事をDistractedされていて,Behind Schoolworkの状態にあり,日中もSMをしていて,インターネット中毒であると報告している.また学業成績が振るわないとのこと.

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ACM CSCW2015 参加報告 その3

1日目.一般セッションの報告です.
 
ACM CSCW2015ホームページ
 
「Understanding Deviance in Collaboration」のセッションから,
 
1. The Perverse Effects of Social Transparency on Online Advice Taking
 Duyen T. Nguyen, Carnegie Mellon University, USA
 
ネット上のQAサイトなどの回答者のTransparency(その人がどのような人なのかに関する情報の公開の程度)を上げたら,Bad adviceでも受け入れる可能性が上がるか?ということを解明しようとした研究である.
 
投資に関するアドバイスを回答者から受けるという想定のものとTransparencyを変えた実験を行った.特に仕事(投資)に関するソーシャルメディア上での行動を可視化するかどうかに注目している.面白いと思ったのは,仕事に関係しない内容でも,その回答者のアドバイスを受け入れるようになるという結果を得た点である.
 
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3. Characterizing Online Rumoring Behavior Using Multi-Dimensional Signatures
 Jim Maddock, University of Washington, USA
 
Twitterでのボストンマラソンの爆破事件における噂の広がりやその記述の特徴について調査した研究.時間経過による広がり方と,ドメインの多様性,語彙の多様性,地理学的特徴について調べている.噂を6つのタイプに分類し,上記の特徴について調べている.
 
事実を述べた噂は,語彙が多様であったと報告している.一方,真実でない噂は,語彙の多様性が低かったと報告している.これは非常に興味深い結果である.
 
 
「Trust & Anonymity」のセッション
 
1. This is a Throwaway Account: Temporary Technical Identities and Perceptions of Anonymity in a Massive Online Community
 Alex Leavitt, University of Southern California, US
 
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捨てアカウントを使っているユーザについて調べている.仮説は以下の3つ.
H1: 個人情報を公開したがらない人は捨てアカウントを使いがちである.
H2: 聴衆が多いと感じられる場合には,捨てアカウントを使いがちである.
H3. 匿名性が保たれないと感じている場合は,一時的なアカウントを使いがちである.
 
仮説1と2はサポートされず,仮説3のみサポートされた.人は,システム的に匿名性が保証されないと思った場合は,捨てアカウントを使う傾向にあるということである.いずれの仮説もサポートされると思ったが,そうでなかったのは,この研究分野の難しさを物語っているように思える.

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ACM CSCW2015 参加報告 その2

オープニングキーノートの報告です.
 
ACM CSCW2015ホームページ
 
Jeffrey Hancock: The Facebook Study: A Personal Account of Data Science, Ethics and Change
Cornell University
 
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Facebookが,negativeな投稿,positiveな投稿のみをニュースフィードに表示させることで,ユーザのpositiveな投稿やnegativeな投稿がどのように変化するかを調べた実験は有名な話である.この実験では,positiveな投稿を少なくすれば,そのユーザはネガティブな投稿が増え,negativeな投稿を少なくすれば,そのユーザはpositiveな投稿が増えるというものであった.
 
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Hancock博士らは,これに対してメディアでどのような反応があったのかを調べた.多くのメディアでは,研究倫理審査委員会を通さなくて良いのか?,インフォームドコンセントはどうなっているのか?,この研究はなぜここまで議論を引き起こしたのか?など,様々な意見を引き起こした.
 
Facebook上の投稿において,第一人称を使っている割合,怒りを表しているもの,不安を表しているものを,感情的なものそうでないものとに分けて回数を調べており,感情的な投稿には上記のものがいずれも増えることが確認された.
 
また,アカデミアでの議論では,倫理について述べているものと科学について述べているものに分け,倫理について述べているものは,第一人称と不安が多く,科学について述べているものは怒りについてが多かった.
 
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また,どの方法でFacebookがあなたのコンテンツの選択をどのように行っていると思うか?を
paparazzi, personal shopper, magazine, spy
の中から選ぶ調査をアンケート調査にて行った.
paparazzi:ホットトピックや人気トピック
personal shopper:あなたが欲しいコンテンツを選んでいる
magazine: あなたが知りたいストーリーやトピックを集めている
spy: あなたのブラウジングやメッセージのヒストリーを集めいている
 
面白い内容の調査ではあったが,これらの間にはほとんど差がなかったと報告された.
 
Twitterのタイムラインも非常に活発で,講演を聞きながら追うことは,非常に難しかった.1年近く経った今でも,議論を引き起こす内容であることが分かる.
印象に残ったTwitterのタイムライン上のtweetには,「倫理は,実験方法論や教育,トレーニングに組み込むべきだ」や, 「FBの心理実験への反応について,非常に正直に調べた研究だ」,「Webへの投稿はパブリックなものだが,SNSへの投稿はパブリックとプライベートの線引きがあいまいだ」など多くの意見が投稿され,それらを見ているだけでも,興味深いものであった.

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ACM CSCW2015 参加報告 その1

2015年3月14日~18日まで,カナダのバンクーバーにて第18回ACM CSCWの国際会議が開かれました.
ACM CSCW2015ホームページ
 
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論文の投稿数が575件で,そのうち採択されたのは161件でした.採択率は約28%です.この国際会議は,学術論文への投稿と同じように再査読の制度(“Revise and Resubmit” (R&R)プロセス)があるため,難度はこの数値以上に高いものと言えます.再査読にまでいきついた論文は262件(45%)でした.投稿数は昨年度比13%増で,この分野への高い関心がうかがえます.採択された論文の出身国は23か国です.
 
この会議では毎回,論文のタイプに関する内訳が発表されるのですが,定性的評価の研究,定量的評価の研究,テクニカルな研究の比率は,それぞれ44.7, 31.7,9.3%でした.定性的評価が大半を占める会議は,Computer Scienceの分野ではきわめて珍しいと言えるでしょう.
 
1つの発表当たり25分あり,十分な時間を使って説明でき,議論もできます.
参加者は30か国から645人で,10人以上の参加があった国は,ブラジル,カナダ,デンマーク,ドイツ,日本,UK,USでした.
 
何回かにわたり,参加報告をアップロードします.

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