« 2013年3月 | トップページ | 2014年1月 »

2013年9月

INTERACT2013一般セッション参加報告

INTERACT2013の一般発表から,興味深かったものを取り上げ紹介します.今回のINTERACT2013の参加報告は,これで最後になります.
 
Data entry mechanisms and devicesのセッション
(3) Selection-Based Mid-Air Text Entry on Large Displays: Anders Markussen, Mikkel R. Jakobsen and Kasper Hornbak
(University of Kopenhagen)
 
Img_5158
 
離れた大画面のディスプレイ上に,キーボードやキーパッドを表示し,エアで指を動かすことで文字入力できるインタフェースの比較を行っている.いずれのインタフェースも指は少し曲げれば,入力できるようになっている.
 
Img_5160  
比較しているのは,以下の3種類.
・Projected QWERTY
・MultiTap
・H4 Mid-Air (H4MA)
 
Img_5161  
Projected QWERTYは見ての通り,画面上にキーボードを表示するもの. 
 
Img_5162
 
MultiTapは,ガラケーでおなじみの9ボタンのインタフェース.ただ,携帯での入力と同じように,何度もボタンを押さないと入力できない文字もある.
 
Img_5163
 
H4MAは,上下左右の方向で,文字が絞り込めるようになっており,絞り込んだ中からさらに上下左右で選べるようになったもの.
 
Img_5165
 
Img_5166  
実験では,1分あたりの文字の入力数で評価している.結果は驚くべきものではなく,QWERTY,MultiTap,H4MAの順で良くなっている.mental effortも調べており,これも上記の順で良くなっている.
 
Img_5168
 
Img_5169
結構当たり前な結果で面白みに欠けたが,Projected QWERTYはかなり大きなキーボードを画面に表示しなければならず,何かを見ながら入力することができない.その当たりの制約を設けて実験すると,また別の面白い結果が出るのではないかと思い,手を挙げて質問し,指摘した.
 
 
Facilitating social behaviour and collaboration IIのセッション
(2) OpinionBlocks: a crowd-powered, self-improving interactive visual analytic system for understanding opinion text
Mengdie Hu, Huahai Yang, Michelle X. Zhou, Liang Gou, Yunyao Li and Eben Haber
(Georgia Institute of Technology, IBM Almaden Research Center)
 
Img_5176  
アスペクトベースのオピニオンマイニングの結果を可視化表示する研究.
図のようにアスペクトごとに,positiveなレビューの数,negativeなレビューな数,中立なレビューの数を,■で示している.■にマウスカーソルを当てると,そのレビューの内容が見られるようになっている.
 
Img_5178  
Img_5179  
自然言語の処理としては,SVOのトリプルを抽出し,主語に当たるところをアスペクトの候補としている.
アスクペクトの候補から,よく出現するn-gramを抽出する.
という処理をしているらしい.
 
そのアスペクトに対して,VやOの部分から,辞書ベースでpositiveとnegativeを分類している.
 
手法自体は,いたってオーソドックスで新規性はない.研究の新規性は,この可視化したインタフェースにある.
 
実験では,amazonのメカニカルタークで被験者を募り,実験を行っている.被験者は,レビューを読んで,買うべき商品を決定する.また,アスペクトやその極性判定に間違いがある場合は,それを修正することができる.
 
実験では,
・ユーザは70%以上のアスペクトについて妥当であるとしている
・90%以上のユーザが意見の根拠を発見できている
・意見が役に立ったとするユーザは101人中81人
などの結果を残している.
 
最も興味深かった結果は,
アスペクトや極性判定の修正は,49であったこと.その88.8%は正しかったということ.
そして,95%の人が,この修正に参加したいと回答していること
である.
 
ただ,実際の修正は49しかなかったのに対して,アンケートでは多くの人が修正したいと答えている点に,少々ギャップを感じる.
 
実験については,もう少し慎重に行った方が良いように思う.

|

INTERACT 2013 招待講演2 Yvonne Rogers氏

INTERACT 2013の2つ目の招待講演について報告します.
 
Mindful or Mindless Technology?
Yvonne Rogers (University College London)
 
Img_5115  
この講演では,人間味のあるテクノロジーか?それとも人間味のないテクノロジーか?どちらを目指しますか?という問いかけを行うものであった.
 
Img_5116
 
日本では,i-modeの時代から,電車やカフェ,その他公共空間で,ほとんどの人がケータイの画面にくぎ付けになっているというシーンが見られた.
 
筆者はこの半年ほどで,オランダ,ポルトガル,アメリカ,シンガポール,南アフリカ共和国の5か国を訪れたが,まぁどこの国でも多くの人がスマホの画面にくぎ付けになっている.特にシンガポールのMRTの中では,それが顕著であった.世界どこに行っても,公共空間で人はサイバー世界に没頭し,時に友達と居合わせても,その場の友達とは会話もしないことも見られる(下記,写真参照).
 
Img_5117  
講演者は,このような状況を憂い,今のテクノロジー,ほんとにこれで良いの?という問いかけをし,さらに講演者の研究グループで行っている心の通った(mindfulな)テクノロジーの紹介をするという内容であった.
 
講演後,居合わせた参加者と話したのだが,彼は「あの講演者って,実世界でのコミュニケーションあり=mindful,サイバー世界のコミュニケーションのみ=mindless,って言いたいんだよね.」と話していたのだが,確かにそういう誇張はあったかもしれないが,彼女のやっている試みそのものは面白いものであった.
 
それらをざっと紹介すると,一つ目はグループにiPadを渡して実世界で議論をさせるものや(すみません.詳細は忘れてしまいました),
 
Img_5120
 
果物に電極を付けて,それを楽器にするもの.
 
Img_5120_2
 
これを高齢者向けの施設に持ち込み,複数人で演奏させたもの.このバージョンでは,参加者同士が手をつなぎ合わないと音が出ないようになっている.
 
Img_5121
 
店のレジに,「今日の気分を入力してもらうボタン」を置いたもの.お客がこれを押すことによって,店の人との会話が始まることを期待している.
 
Img_5123
 
同じく,今日の気分に合う色のボールをツイストしてもらうもの.ツイストすると,建物に埋め込まれたLEDが光るようになっている.これをきっかけとして,コミュニケーションが始められるようになっている. 
 
Img_5125  
などがあった.
これらの事例を見ていると,大阪大学経済学部の松村真宏先生がされている「仕掛学」に近いなと思った.
松村真宏先生のHP:http://mtmr.jp/ja/
 
彼女はこの講演では,
・シンプルなインタフェースから,リッチなインタラクションを生むもの
・共有するインタフェースであること
・体験を共有し共感できるもの
・物理的なものや遊び心のある社会的コネクションを生むもの
・オフラインでのコネクションを生むもの
が良いという結論を話していた.
 
シンプルな仕掛けから,周囲にいる名前も知らない人たちとのコミュニケーションを生むという考えは良いなと思った.これはテクノロジーの力を借りなくても実現可能ではあるが,テクノロジーがある方が人は興味を惹かれ,多くの人がその仕掛けに触れていくと言う可能性がある.
 
多くの事例を試し,そこから共通する知見やノウハウ,モデルを導き出してもらいたいと思った.
 

|

IFIP INTERACT 2013 参加報告1日目

ヒューマン・コンピュータインタラクションの国際会議INTERACT 2013に参加してきましたので,その参加報告をいたします.
 
Img_5046
 
INTERACT 2013は,南アフリカ共和国のケープタウンで行われました.
 
参加者は37か国から356人(事前登録)でした.日本は,9番目に参加者が多く14人の参加でした.
 
Img_5044  
カンファレンスバッグが,いくつもデザインの種類があり,自由に選べました.皆,どれにするか悩んでいました.
 
Img_5045  
地元の人たちによる手作りだそうです.こうして雇用を生み出すことも,この国では重要なことのようです.
 
正確な採択率は不明ですが,全カテゴリで総投稿数が639件.そのうち,
フルペーパー:128件
ショートペーパー:77件
インタラクティブポスター:31件
とのことです.
 
 
INTERACT 2013 招待講演 Abigail Sellen氏
 
招待講演について報告します.
 
Designing Hybrid Input Paradigms
Abigail Sellen (Microsoft Research Cambridge UK)
 
Img_5055  
音声やジェスチャなどを用いたマルチモーダルインタラクションの研究は古くからおこなわれている.しかし,マルチタッチや正確なジェスチャ認識を用いたマルチモーダルインタラクションは近年になってようやく実現したものである.これらの新たなインタラクション手段は,インタラクションのデザイン空間を広める利点がある.また,逆に複数のインタラクション手段が併存することによる複雑性ももたらすことになる.この講演では,彼女の研究グループでの研究事例を基に,マルチモーダルインタラクションにおいて,何を考慮して設計すべきか,一つの知見を述べている.
 
一つの研究事例は,音声とジェスチャによって外科的手術を支援する研究である.画面に手術すべき血管の3次元モデルが表示されており,それをジェスチャにより,拡大・縮小したり,違う場所を表示させたりしている.
 
Img_5059  
Img_5061  
このようなマルチモーダルIFは手術と言う状況を考慮して設計すべきだとしている.例えば,以下のようなことを考慮しないといけないと述べている.
・片手の操作にすべきか,両手の操作にすべきか
・手先のジェスチャのみか,全身のジェスチャにすべきか
・動かせる空間範囲(空間的制約)
 
この研究で得た知見としては,
・音声によりモード変更,ジェスチャにより空間操作が適している
・マルチモーダルの入力は,明確なフィードバックが必要である
・ユーザにとって,可制御であることと,自動化されていることが,適切に分けられていることが重要である
と報告している.
 
個人的には,最後の可制御であることと,自動化されていることという観点は興味深いと思う.これは情報推薦を含むパーソナライゼーションやユーザ適応でも言えることで,何が適応されるのか,何が自分で制御できるのかは,適切に設計されていないと,適応したものを活用しようとしなかったり,せっかくよりよく適応してもらえるはずなのにその制御をおこなわなかったりするからである.
 
もう一つの研究例は,"Two foot PC"というデスクトップの操作環境を拡張するものである.ディスプレイ上に置いた小型カメラによりキーボード上部(及び左右)の映像を撮影し,そのうえでの手のジェスチャを認識し,それを入力に用いるものである.
 
Img_5070  
例えば,キーボード横で手をフリックさせることでスクロールさせたり,拡大縮小させたり,というマルチタッチスクリーンと同じことができる.また,キーボード上で手のひらを返すことで,前面にくるウィンドウを切り替えられるようになっている.また,二つの手のひらを並べることで,ウィンドウを並列に並べることもできる.
 
Img_5072  
これは,実世界で手でオブジェクトを操作するメタファーを利用しており,非常に直感的であった.
 
Img_5077  
Img_5078  
彼女は,複数の入力手段があることを,代替ではなく増強であるとしている.これはまさにその通りであると思う.
 
User preferences and behaviourのセッション
(1) Characteristics of Elderly User Behavior on Mobile Multi-Touch Devices Susumu Harada, Daisuke Sato, Hironobu Takagi and Chieko Asakawa
IBM Research, Tokyo Research Laboratory
 
Img_5083  
高齢者に,iPhoneとiPadを渡し,電話番号を入れるタスクと,アドレス帳から特定の人のアドレスを選択するタスク,地図アプリケーションで東京からロンドンまでたどるタスクを行わせ,そのユーザ行動を分析している.実験では,特にフリックの動作に慣れていない人が多く.非常に短いフリックを多く行う人や,逆に非常に長いフリックを腕まで動かして行うような人までいることを報告している.地図アプリケーションでも同様で,ズームアウトを行わず,同じ縮尺で短いフリックを何度も繰り返している人がいたことを報告している.
 
Img_5085  
この行動を見る限りは,高齢者にとってフリックは相当に新しいインタラクションであり,かなり戸惑うことがうかがえる.会場からは,高齢者であれ慣れるのではないか?という質問があった.これには同感である.スマートフォンの操作と言うのは,テレビのCMやドラマなどで,日常的に目にすることが多くなった.そのうち社会に常識として埋め込まれ,そうなると今回の実験結果とは違う結果が得られる可能性がある.
今回の行動が変化していくのか,それともテクノロジーが浸透してもこのような行動が続くのか,引き続き研究していくと面白いと思う.

|

« 2013年3月 | トップページ | 2014年1月 »