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国際会議WWW2009論文感想その8

Cameron Braganza, Kim Marriott, Peter Moulder, Michael Wybrow, Tim Dwyer: Scrolling behaviour with single- and multi-column layout, Proc. of WWW '09, 2009.

縦スクロールと横スクロールで読みやすさが異なるかどうかを調べた研究.伝統的なGUIでは,文書は縦スクロールで読むことが一般的である.縦スクロールは,あまり1行あたりの文字数を多くできないことから,画面が幅広くなると,使用していない領域が多くなり,効率的でない可能性がある.そこで横スクロールを基本とするインタフェースを開発し,その効果を検証したのがこの論文である.

縦スクロールは伝統的なGUIのものを採用している.横スクロールでは,スクリーンを3分割し,左から文書を表示していく.1分割目の画面の下まで表示されたら,続きは2分割目の画面の上から表示する.同様に,2分割目の画面の下まで表示されたら,続きは3分割目の画面の上から表示する.スクロールは,分割単位で左方向にずれていくことで実現する.

この2種類の閲覧のしやすさを比較するのが主な目的だが,同時にスクロールの入力方法を,Grab-and-drag,scroll ball,scrollbar, keys, overviewの5種類用意し,この違いも検証している.
Grab-and-drag:ユーザがマウスの左ボタンを押し続ければ,カーソルが矢印から手の形に変わる.その時,マウスをドラッグすれば,表示する段を変えられる.
scroll ball:マウスボールを360度動かせるマウスを用いる.
scrollbar:スクロールバーの両端にある矢印を押すか,スクロールバーをスライドさせる.
keys:アローキーを使って,表示する段を変えられる.pageup, pagedownキーを使って,一画面分変えられる.
overview:文書の表示位置を示すオーバービュー上をクリックすることで,表示する段を変えられる.

好みに関する実験では,24人の被験者のうち,縦スクロールを好む被験者が16名,横スクロールを好む被験者が8名となっている.入力方法は,Scroll ballが最も多く使われている.keys, scrollbar, grab and dragも,そこそこ使われているが,縦スクロールと横スクロールでそれほど違いはない.

スクロール回数とスクロール持続時間に差があるかどうかも検証している.スクロール回数と持続時間共に縦スクロールの方が大きいことが統計的に認められている.しかし,文書を読むのにかかった時間は,両スクロールとも差がなかったことを報告している.

最後に,視線の動きを観察し,ユーザのスクロールの仕方を分析している.例えば,段単位で読んで該当段の末尾まで来たらスクロールするとか,画面の末尾で視線を横方向にしか動かさず,ちょっとずつスクロールするかなどである.ユーザがどのタイプになるのかを分類し,その数を集計している.

(感想)
ブラウジングという行為という意味では,Webと関係がないとは言えないが,閲覧するのはワープロの文書でも良く,なぜこの論文がWWW Conf.に載っているのかわからない.Webの研究もやることがなくなりつつあり,画像処理とかヒューマンインタフェースとか,そういうネタしかなくなりつつあるのかもしれない.
論文としては,確かに横スクロールで文書を読むという行為の調査をしたことは,初めてであるかもしれない.実験では,慣れ親しんでいる垂直スクロールの方が好まれ,パフォーマンス的には差がなかったと結論付けられている.あまり驚くような結果ではないため,論文の価値としては,それほど高くない.スクロールに焦点を当てた視線に関する分析は,やられていないのであれば,価値があるであろう.本質的に新たな発見はないが,スクロールのレイアウトの違い,スクロールアクションの入力方法,視線の動き,これらを調べた合わせ技的なところが評価されたと考えてよいだろう.

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